DisplayPort 1.3策定と5K Thunderbolt Displayの可能性【2014.10.06更新】
2014年9月15日にVESAがディスプレイの接続に関する新規格、DisplayPort 1.3を発表した。
DisplayPort 1.3
この規格を用いることで60Hzの5K(5,120x2,880)ディスプレイや、2画面の4K UHD(3,840x2,160)ディスプレイをケーブル1本で出力できる。
従来のDisplayPort 1.2では5.4Gbps×4レーンで計21.6Gbpsだったのに対し、DisplayPort 1.3は、8.1Gbps×4レーンの計32.4Gbpsへと50%広帯域化した。これにより、5K(5,120×2,880ドット)ディスプレイや、2画面の4K(3,840×2,160ドット)ディスプレイを1本のケーブルで転送できる。オーバーヘッドを考慮した非圧縮映像時のスループットは25.92Gbpsになるとしている。
DisplayPortの世代ごとの帯域の違いは以下の表の通り。
Ver. | Gbps @1lane | Gbps @4lanes |
---|---|---|
1.0 - 1.1 | 2.7 | 10.8 |
1.2 | 5.4 | 21.6 |
1.3 | 8.1 | 32.4 |
DisplayPort 1.3はUSBなどのデータ転送も可能にするDockPortにも対応。HDMI 2.0とHDCP 2.2もサポートし、色差信号YCbCr=4:2:0による8K出力もサポートしている。
HDMI 2.0とHDCP 2.2のサポートは,DisplayPort 1.3でも継続。要は,変換ケーブル経由でDisplayPort出力をHDMI入力につなげるといった使い方は今後も行えるということだ。色差信号「YCbCr=4:2:0」による“間引き”によって8K出力もサポートしているというのも,次世代テレビを考えると重要なポイントだろう。
対応製品の登場時期は未定。現行規格のDisplayPort 1.2では規格策定が2009年であったのに対し、対応ディスプレイが普及し始めたのが2013年ごろからであった。これはDisplayPort 1.2の普及というよりもDisplayPort 1.2の必要な4Kディスプレイの普及と捉えるべきで、近年ではさらに高解像度化が進んで5Kディスプレイも発表されており、DisplayPort 1.3の普及は1.2よりは迅速に進むと考えられる。
米Dellは4日(現地時間)、5,120×2,880ドット表示に対応した27型液晶「UltraSharp 27 Ultra HD 5K」を発表した。第4四半期に発売予定で、価格は2,499.99ドル。
5K Thunderbolt Displayの可能性
Macユーザーとして気になるのは5KのThunderbolt Displayの登場である*1。現行のThunderbolt Displayの画面解像度は2,560x1,440であり、これまでのAppleのRetinaディスプレイ化の法則に従えば5K (5,120x2,880)がまさにRetina化したThunderbolt Displayの画面解像度と一致する*2。
Dellが製品を発表したことから、パネルは既に製造可能であることがわかり、今回接続規格が発表された。あとはこの規格に対応したGPUの登場を待つのみ、と思ったが、問題点が2つ。
1. iMacにみられるフルラミネート加工されたパネルの有無
ディスプレイとしてはThunderbolt DisplayよりもiMac内蔵のディスプレイの方が発表が新しく、Appleによると、カバーガラスに液晶を密着させるフルラミネーションと二酸化ケイ素と五酸化ニオブのプラズマ蒸着処理を行うことで、グレアの色再現性を活かしつつ反射を75%抑えたとしている。
すべてをもっと近くで。
iMacのディスプレイは、カバーガラスの後ろに取り付けられているのではありません。 ガラスと密着しているのです。私たちはフルラミネーションという先進的な加工法を 使って、液晶ディスプレイパネルとガラスの間にあった隙間をなくしました。これにより、 あらゆる画像がまるでディスプレイから飛び出してくるような迫力で映し出されます。反射を少なく。
フルラミネーションには、液晶ディスプレイパネルとカバーガラスの背面での光の反射を減らす、というもう一つのメリットがあります。でも私たちはそこで止まりませんでした。色の質で妥協することなく、ガラス前面の反射も減らす方法も考え出したのです。これまではガラスに反射防止コーティングを施す方法を使ってきました。でも今回は、カメラのレンズのような小さい面や戦闘機のパイロットのヘルメットだけに使われてきた処理を採用しました。プラズマ蒸着と呼ばれるこの処理では、二酸化ケイ素と五酸化ニオブの層でガラスをコーティングします。この層はとても精密で薄く、原子単位で計測されます。こうして手にしたのが、驚異的なまでの反射の少なさと、鮮やかで正確な色彩です。
新しく発表するThunderbolt Display(もしくは次世代iMac)では、画面解像度が5Kになる代わりにフルラミネート加工ではありません、ということをAppleがやるとは考えにくい。つまり、ただの5Kパネルでは不十分で、カバーガラスにフルラミネーションされた5Kパネルが必要となる。
先述したDellの5Kモニターはニュースリリースにおいて、汚れ防止/抗反射のエッジトゥエッジガラスデザイン(筆者訳)、と述べており、これが現行iMac同様の加工を施したパネルを指している可能性はある。
Dell PremierColor and the anti-smudge / anti-reflective edge-to-edge glass design provide true-to-life color accuracy and pristine picture quality for color-critical work.
2. Thunderbolt 3(仮)との兼ね合い
5KのThunderbolt Displayを接続するにはMac側も5K出力に対応する必要があるわけだが、それはほぼDisplayPort 1.3に対応するということと同義である。現時点でもDisplayPort 1.2二系統のMSTで5Kを映すことは可能と思われるが、そんなディスプレイを作ったところで、二股ケーブルでの接続になるだけでなく実際に二系統出力できるのはMac Proのみという特殊仕様になってしまうからだ。
また、知っての通り現在のMacラインナップには純粋なDisplayPortを持ったモデルはなく、全てPCIeを兼ねたThunderboltポートとなっている。よって、5KのThunderbolt Displayに期待するMacユーザーは、GPUのDisplayPort 1.3への対応だけでなく、さらにそのDisplayPort 1.3に対応したThuderbolt 3(仮)の発表も待たなければならない。
ではそのThunderbolt 3(仮)はというと、2015年後半にアップデートが見込まれている。噂されている特徴は以下の通り。
- コントローラのコードネームはAlpine Ridge
- PCIe 3.0対応で帯域が現行の20Gbpsから2倍の40Gbpsに
- PCHではなく、CPUのPCIeと直接接続
- DisplayPort、HDMI 2.0、USB 3.0対応
- コントローラーチップの消費電力50%削減
- IntelのCPU、Skylake(2015年後半)と同時期
- コネクタ形状も厚さ3mmの薄型になり100Wまでの電力供給が可能
40Gbpsもの帯域があれば、5Kのディスプレイを出力しながらでもEthernetやUSB 3.0をフルスピードで使用するための帯域が残る。ドッキングステーション機能を兼ねるThunderbolt Displayにとっては要求を十分満たす規格となるだろう。
画素数の多いディスプレイはGPUのメモリ帯域も広帯域が必要であると考えられるため、eDRAMを持たずVRAMにCPUとの共有メモリを使用する機種では、残念ながらThunderbolt 3(仮)ではあるが5K出力には対応しない、という状況になると思われる。
まとめ
DisplayPort 1.3が発表され、5Kの出力規格が整った。MacではこのDisplayPort 1.3に対応したThunderbolt 3(仮)を待つ必要があり、5KのThunderbolt Displayが実現した際にはフルラミネーションされたパネルが使用されると思われる。両者が出そろうのは早くても2015年後半と考えられる。
更新履歴
2014.10.06 脚注追記。「解像度」を「画面解像度」、「画素数」にするなど、文章を一部校正。
アップル Thunderbolt Display(27インチフラットパネル) MC914J/B
- 出版社/メーカー: アップル
- メディア: Personal Computers
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*1:個人的には特に5K Thunderbolt Displayの発表は期待していない。あくまで実現可能性への興味。
*2:iPhone、iPad、MacBook ProのRetinaディスプレイ化において同サイズ、縦横2倍の画素数の液晶を採用していることから。Retinaの定義自体は27-inchのディスプレイであれば4K UHDやそれ以下の画面解像度でも満たすことができる。